ガーベラさん/瀬崎 虎彦
 

 わたしはひそかにその人をガーベラさんと名づけている。
 月曜日の昼、大体同じ時間にやってきて、大体同じ内容の花束を頼んでいく。ガーベラと赤みの差す花を葉蘭で包む花束を。
 だからガーベラさん。


 駅前に花屋が多いのは、病院への見舞いにせよお祝いにせよ、求める人にとって便利だからだろう。人が多く冷暖房の効いた電車の中へ生花を長時間持って行くのはあまりよくない。持って歩くわずらわしさも少ないほうがいい。花屋の立地には理由がある。あたりまえのことだけれど、何にでも理由がある。
 わたしが働いている花屋さんの場合、やはり病院へのお見舞いの品が多い。それから近くにいくつかある大
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