二人の戦おうとする闇/番田 
 

誰もいない、誰ひとりとしてすらもいない風が吹いている。僕は衝動を抑えながら、そんなふうにただ、流れていくことを続けた。指にあるのはただ一本のマッチ、すべての踏みだそうとする方向もないままに、立ち止まることもないままに、答え、となることもないままだった。森があり、林があり、平板になったかのような海が突きでた浜辺からは広がっていこうとしていた。大西洋の鼻先にはアメリカがあり、手をのばす者には金銀財宝が存在することだろう。音楽はもうかすかなものではなかった。鳥のささやきだけがサラリーマンのベッドタウンのこのどこかへと、どこかですらない音響となっていく感じがした。

そんな感覚がしていた。友達はゲ
[次のページ]
戻る   Point(2)