「波の声をきいて」(2)/月乃助
 
 この店でサーバーの仕事をし始めた頃、最初は、オーダーのとり方もトレーの持ち方さえも戸惑っていたが、それも、すぐ慣れたのは何か水商売の天性があるのかもしれないと、Sayoは思ったりする。昼の仕事は、夜ほどアルコールの臭いを嗅がずに済むし、酔った客の騒がしさがなくて、Sayoは気にっていた。
 夜と比べるとチップの額はさすがに少なく、長くサーバーをしている女達は、夜の方をありがたがるが、それも、Sayoのようにシングル・マムで子どもの世話をしなければならないなら、夜はあまり働きたくない。
 ただ、Sayoの娘のHiromiは、もうミドル・スクールのグレード7になっているので、Sayoは週に一回だ
[次のページ]
戻る   Point(2)