帰路/夏嶋 真子
夕暮れの風が民家の風鈴を鳴らし、
茜色のまなざしで今日をねぎらうように、わたしの頬を撫でてくれる。
その涼しさに、ほっとして深く息を吐く。
庭先には、萎れた朝顔が脱ぎ捨てた服のように垂れ下がり、
その隣では明日の蕾が夢の中。
お向かいの家では、夏の名残りの薔薇が白い花びらを黄昏に染めている。
思えば、花々の多い町だ。
多くの家々が、緑や花で彩られ
鮮やかな花とそれを育てる人の心の、アーチを潜るような道を歩く。
公園からは蝉時雨。
昨日までとは違う力ない蝉の声に
季節がうつりかわるその瞬間を感じて、寂しさがこみあげる。
夏は今日で、終わるのかもしれない。
商
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