東京少年 「新宿 (二)」/虹村 凌
どんなにゆっくり行っても、祖師ヶ谷大蔵から新宿まで1時間はかからない。煙草を吸ったり、立ち読みをしたり、音楽を聴きながら歩いたり、と出来る限りの方法で時間を潰した。こういう事があまり苦にならない。ただ、今日、これからするであろう話の事を考えると、あまり明るい気分にはなれなかった。
待ち合わせ時間の10分前に、新宿駅小田急改札西口に着いた。俺は携帯を開き、ローザに到着した旨を伝えて、買ったばかりの缶珈琲をプルトップを引いた。カシュッ、という音を立てて、味気ないブラック珈琲の匂いが漂ってきた。口に含むと、苦味と共に缶珈琲独特の安っぽい香りが広がった。この美味しくない感じが好きなのだ。いや、この
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