東京少年 「新宿 (二)」/虹村 凌
 
この不味さが美味しいと思うのだ。缶珈琲を飲みながらしばらくボーっとしていると、改札口の向こうから手を振るローザが見えた。
 ローザはイタリア人と日本人のハーフで、同級生の粕村の紹介で知り合った、同い年の女の子だった。右目の眼輪筋に軽い障害を抱えているらしく、いつも右目が半分ふさがっていた。ちょっと痩せ気味のローザは、ほっそりしら腕を振りながら、改札を出てきた。
「お待たせ!待った?」
 半分ふさがった右目で笑いながら、ローザは俺に訊いた。
「いや、全然」
 お決まりの返事をすると、俺とローザは並んで歩き出した。
「元気?」
「うん、元気だよ。ローザは?」
「私も元気
[次のページ]
戻る   Point(0)