一時閃光/影山影司
 
 紙製梱包材を開封すると、下読みが蹲っていた。両膝で頬を挟むように体育座りして、脚の爪の長さを測っている。体毛は全て剃ってあり、陽の光に当たり慣れていないのか肌は薄紅色。年の頃は二十後半だろう。同じ大きさの箱が台車に乗せられて、一つ、二つ、三つ四つ、空き部屋の隅に順々に下ろされる。どれも中に似たような下読みが入っている。初夏と年末年始は、下読みの旬だ。それにあわせて我々出版社も、この時期に文学賞を公募する。
 青の作業服に身を包んだ配達業者が手際よく折りたたみの机と椅子を広げて並べる。席の数は十五。応募総数は約1400作だから、一人当たり10作品ほど読む計算になる。間に合うかなぁ、とザッパに計算
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