地蔵菩薩/within
 
 もうやけっぱちだった。仕事も棒に振り、ここで金を借りることができなければ娑婆を捨てるか首をくくるしかない。ほんの少し、ほんの少しの種銭さえあれば取り戻せる、きっと。

 仁王の睨む山門をくぐると百段はあろうかと思われる石段が続いていた。途中、右手に樹齢五百年ほどあるといわれる霊木がそびえ立っていた。いつもこの寺に来るたびに清浄な心持ちになることができた。四国で育ったせいか妙に信心深いところがあり、何かと寺に訪れ、賽銭を喜捨し、手を合わせた。特にギャンブルに身をやつしに行く時なぞは、決まってこの寺に参詣した。そうすることで少しでも運を引き寄せることができればと俗なもくろみがあった。その日もれい
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