魔法使い/ふるる
 
 少女がその魔法使いの弟子となったのは、魔法使いを一目で好きになってしまったからだ。川から涼しい風が吹いてきていたある夏の午後、川べりでうずくまる黒い影を少女は見た。すぐには魔法使いだとはわからず、古い農具の塊のように見えて、それが動いたのでびっくりしたのだ。魔法使いがこの村にいること、滅多に姿を現さないこと、薬などを作っているが、それが効くのか効かないのか分からないこと、はよく知られていた。そこで出された村人の結論は一つ、「魔法使いには近づくな」だった。
しかし少女は幼い好奇心から、動く黒いものが魔法使いであることを木陰から確かめ、一体何をしているのだろうと、そっと近寄ってみた。つい、と魔法使
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