魔法使い/ふるる
法使いのマントの中から何かが飛び出し、夕暮れの雲へ羽ばたいていった。
その薄紅の羽色から、あれは薔薇鳥だ、と少女は分かった。春に、愛する者への贈り物として、村の若者たちに羽をむしり取られた薔薇鳥は、茂みに隠れて次の羽がそろうのを待っていることが多い。中にはひどく傷ついて永遠に飛べなくなり、野犬の餌食になるものもある。春が過ぎれば薔薇鳥はどこかへ飛んでいってしまうので、夏にいるのは、傷ついた薔薇鳥だけだ。少女は思った。きっと、魔法使いは薔薇鳥の羽を魔法で治してやったのだ、と。その時、魔法使いが振り向いた。顔は年老いて樹木のようだったし、瞳は月のない夜空のような闇色だった。少女はその静かな深い色に心
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