夏の終わりに吹く風に/十重山ハルノ
この町では、お盆を過ぎたら夏が終わるだとか、二つくらい隣町で毎年行われる音楽野外フェスが終わったら夏が終わるだとか、みんなそれぞれが、それぞれのポイントで、夏に終わりを告げてゆく。「夏も終わりだね」なんて、会話の穴を埋める口癖みたいに使われることも多いし、そういえば、夏が始まる前は「もう夏だね」なんて、全く不確かな期待感と、そしてやはり口癖のように使っていたような気もする。不確かなものは、不確かなまま消えていったけれど。
僕の夏は昨日終わった。同期の同僚が会社を辞めたのだ。結婚を機に、と一年くらい前から聞いていて、夏があっという間に終わってしまうように、一年もあっという間に、昨日を迎え
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)