塒/rabbitfighter
初めて彼女が家にやってきた時のことを今でもよく覚えている。
その毛むくじゃらな子猫は怯えきっていて、まだ半ば閉じたままの目は潤んでいた。真っ白な毛の上に真っ黒なタキシードを着込んだ彼女はとても小さくてとても可愛かった。小さな口で、フーフーと、精一杯のうなり声で人間たちを威嚇していた。抱き上げられると必死で逃げようとした。
その日、外にご飯を食べに行こうという無慈悲な家族たちから一人僕は家に残った。こんなに震えて、おびえている彼女を放っておけるわけがないよ。片手の中にすっぽりと埋まってしまう、奇跡的な軽さの生き物。
家族が家を出て部屋が静まると、隅っこにいた彼女はふらふらと歩きながら僕によって
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