塒/rabbitfighter
って来た。僕は黙って、寝転んだまま彼女を見ていた。ゆっくりと彼女に手を伸ばしたら人差し指を鼻先にかすめながらおいでと言う。相変わらず震えていて、うなり声を上げながら、僕の指の匂いをかぐ。そのまま指先で鼻先やほっぺたを撫でて上げる。だけどもう、それだけじゃ我慢できなくなって、そっと持ち上げて胸の上に置く。抵抗するだけの力も、彼女にはないのだ。それにきっと、とても疲れていたのだろう。やさしく背中を撫で続けていると、やがて彼女はおとなしくなり、静かな寝息をたてはじめた。それ以来、僕の胸が、彼女の塒になった。
今でも彼女は、人に抱かれるのを嫌がる。猫にしては珍しく、我慢ということを知っていて、20秒
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