文章表現をもっと自由に行いたいんだ/影山影司
天空から地表にまで続く螺旋階段を一段一段辿って下る。
錆びた鉄版にしか見えない踏み板は、実際、電気の通う生きたシステムである。
また一歩、寒、と音を立てて爪先立つ。すると踏み板に若草色が灯る。正解だ。
大昔の民族儀式に『乾いた山の人』というものがある。
若者が一人、水や武器はおろか、衣服や靴に至るまで全てを剥ぎ取られて部落から少し離れた褐色の土と岩で構成される禿げ山を昇る。山は険しく長い。日照りは容赦なく体力と思考を削ぎ落とし、血と汗が体を汚す。
飢えと渇きがひたひたと近づき、陽が傾き始めた頃に儀式は佳境を迎える。
そこまで一つだった道が、急に三本に別れるのだ。
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