ハクチと呼ばれた少女/影山影司
 
 僕は少女を飼っている。
 元々はしらがで生まれてきて、母親にすら気味悪がられて捨て子になった赤ん坊だ。
 ほんの思いつきで、行き当たりばったりで始めたのだけれども、赤ん坊には愛だけを教えようと考えた。まだ泣くことしか知らない赤ん坊に、アルファベットをカプセルに詰めて与える。ひらがなを、カタカナを、漢字を詰め込んだ。小さなカプセルはつるつると滑って胃袋に落ちた。少女は文字を覚えたけど、僕は少女の前で一言も喋らなかった。だから赤ん坊は少女になっても、言葉を発しない。

 ほっそりとした首筋は、はくしの日記帳よりも希望に満ちあふれていた。


 この世が腐りきっているから人々は美しくなれ
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