七人の話 その4/hon
 
 火星棟の二階に、屋敷内で唯一の図書室があった。出入り口の付近には貸し出しカウンターがあり、中に入ると、細長く伸びて広がっている室内の、薄暗い奥へ向かって、古い書架が何列も並んでいる。本にはカテゴリ別に番号が振られている。
 入り口の右手の方には、読書スペースがあって、六人で本を広げられる大きさの机が四つ置かれている。
 充と小遥はその机の一つに、向き合って座っていた。
 充は本を脇に置き、彫刻刀を持って、木を削っている。それは、両の掌でちょうど覆いかくせるほどの大きさの木である。
 小遥は目の前に本を広げているが、本は読んでおらず、頬杖をついて、ぼんやりと充の手元を見ている。



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