アデン 二/soft_machine
 

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 僕は床におかれたビンに近寄った。
 男はまだごしごしやっている。僕はビンにひだり手でふれた。
 液体はとても澄んでいて気にいったから、しずかにビンを揺らした。空にぶつかったひかりが北むきの窓からやってきて、液体の中でチリチリと反射した。
 こんどはりょう手で揺らした。ガタン。ビンが倒れて開いたくちからこぼれる液体がすばらしい速度で床をはっていく、においがまぶしく拡がった。間のぬけた声を上げて男がビンを慌てて立てる横を、僕は柱のむこうにはしってカーと騒いだ。ざまあみろ、だ。
 男は やれやれと言いながら床をふいたあと、ギラギラだった板もぴかぴかにして部屋を出ていった。ど
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