色が溶けていく/宮市菜央
テレビから目を離すと、部屋が真っ白になっていた。壁には昨日買ったばかりの彼女の薄いピンクのワンピースがかかっていた。ワンピースは脱色されたように色を失ってだらりと下がっている。一人でいるのが不安になって、僕は彼女に電話した。
「ねえ、突然色が消えてしまったんだけど」
「私も今そのことで電話しようと思ってた」電話の向こうの、彼女の声は震えている。彼女の泣き顔が触れられそうなほどリアルに浮かんだ。
テレビへと視線を戻す。本体も画面も真っ白だ。だが音だけは相変わらずおめでたい笑い声を振りまいている。車のキーをつかんで僕は外へ出た。
ガレージを、見慣れた形の白い塊がふさいでいる。僕
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