色が溶けていく/宮市菜央
 
。僕の車。キーを回し、ラジオのスイッチを入れてみる。だがスイッチはすべて白く、どれがラジオのものなのか分からない。手当たり次第にスイッチを押してようやくラジオを探し当てた。「道路は現在大変危険な状態ですので、自動車の使用を禁止します」。アナウンスが、男の声で延々と繰り返し流れるだけだった。スイッチを切り、通りに出た。

 道路も白一色で、標識も中央線も看板の文字も、何もかもが消えていた。白く塗りつぶされてしまったのか、あらゆる色が溶け出して白が残ったのか。とにかく、何度目をこすったところで目の前の景色は白いままだ。向こうから彼女が走ってくるのが見えた。

「鏡を見た?」彼女が訊いてきた。「
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