冬の街にて/由比良 倖
裁判所からの帰り、
そろそろ終わりにしてもいいと言われ、
――
1
雲が浮き上がっていく、氷の映る場所は、どこも陸の孤島で、
階段を上るごとに、足音が暖かく身体を包んでいく、
雪が柱を上がっていく、廊下は薄い薄い何枚もの鏡張りで、
私には何の感情も湧かない、尊敬する人たちのドアは、緑に、そこかしこにあるのに、
カフェに入ると、給仕に向かって、私は訳の分からないことを喚きそうになる、
彼女はにやりと笑い、
「大丈夫ですよ。どの一場面も、一枚の迷路にして、
「あなたの全て」
ことん、とお水を置いて、……
私は乾いた乾いた声で「こんにちは」を言う、
窓際の赤い赤い
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