寝過ごす夢を見た/ただのみきや
 
ひとつの時が停滞し
その膝の上わたしは猫のよう
乳飲み子の舌の音
水の音色をさかのぼる

叢に覆われた
つぶれかけた空き家の中で
ひとりの少女に会った
帰る場所がないという
行き着くところはみんな一緒だよ
そうわたしが答えると
彼女はひどく嫌そうな顔
こわれた古い冷蔵庫に閉じこもった

夜のバス停で
ひとりの男に会った
答えが見つからないという
どこにも見つからないさ
おまえ自身が答えなんだから
世界は割り切れないってことの
そう答えると
男は怒って発光し
夜の峠を蛍みたいに上って行った

漁港の朝市で
すてられた魚のはらわたが話しかけて来た

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