http://po-m.com/forum/
ja
Poems list
2024-03-28T22:36:59+09:00
-
それを待ち望んでいたのかも
もう忘れてしまった頃
あるいはいつしかむしろ
望むようになっていたのではないか
夜が終わらないこと を
夜が長すぎたから
もうわからない
いま夜明けがはみ出してきている
その窓から
かつては君を見送った
その記憶は
本物か 幻か
いまはみ出してきている夜明けは
本物か 幻か
いずれにせよ
その窓の彼方から
仄昏い春雷のアルペジオ ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=382357
自由詩
2024-03-21T17:06:57+09:00
-
僕は夢想する
星空模様の傘をさして
君のところを訪ねたい
ジャム一瓶ほどの幸福をたずさえて
なかなか雨はやまないから
君のもとへ辿り着くまでに
傘も溶けてしまうかもしれないけれど
僕も溶けてしまうかもしれないけれど
やまない雨はないとひとは云うけれど
この雨が本当にやまないのか誰も知らない
もしどうにか
ジャム一瓶ほどの幸福を君に届けられたら
その時僕らは
語り合うだろう
この重い雲の上の
本当の星空のことを
僕は夢想する
とうにこの雨に
君も僕も溶かされているのかもしれないと
思いつつ
僕は夢想する ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=381884
自由詩
2024-02-23T10:06:22+09:00
-
闇の中だけで見えるものを見て
いまそのどちらでもない
薄暗がりだからこそ見えるものを
見ている君の瞳が
葡萄のように熟れてゆく ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=381746
自由詩
2024-02-15T11:34:15+09:00
-
置きたい言葉があるとして
それはいつも最初の言葉であり
最後の言葉
初めての言葉であり
いくたびも繰り返されてきた言葉
すでに過ぎ去ったこと
あるいはいまだ起こらないことの中にしか
閃かない言葉
あまりにも純粋に言葉であろうとして
かえってかぎりなく言葉から遁れてゆく言葉
その言葉に辿り着くために
けれど決してそれとは明示しないために
君と僕とは数多の言葉と
沈黙を織りなす
そしていつか
その言葉が君と僕とのあいだに置かれたなら
それはひそかに照らし出すだろう
君と僕とが互いに気づかぬまま
交わしていた約束を ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=381418
自由詩
2024-01-27T10:16:01+09:00
-
不断の悪夢
を見せたのは誰
*
硬質な悲劇の突き刺さる胸
から流れる
見えない血
*
映るのは
虚像 鏡像 (合わせ鏡に谺する声)
そして境界の融解
*
不断の悪夢を見たのは
彼か我か
フィルター越しに夜が明ける
*
脈打ちながら凍りゆく心臓
触れる 振れる 狂れる
翼の散乱
*
虚像 鏡像 の乱反射
碧いdepersonalization
蒼いderealization
*
幾重にも境界が融解し
けれど決して触れられない
フィルター越しのゼリーのような夜明け
*
暗転
隘路にあふれる
見えない血
*
踊っているのは
illusion, delusion, hallucination
刻一刻と凍りゆく心臓
*
彼か我か
不断の悪夢を見せたのは
硬質な悲劇を胸に突き刺したまま
*
乱反射するのは
散乱した翼
融解するそばから立ちあがる境界
*
碧いdepersonalization
蒼いderealization
合わせ鏡に果てしない谺
*
フィルター越しなら同じこと か?
catharsisも
catastropheも
*
踊っているのは
ゼリーのような夜明けへの
insight, intuition, inspiration ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=381296
自由詩
2024-01-19T10:33:18+09:00
-
言葉が崩落してゆくとき
僕は君の夜を抱き
君は僕の夜を抱く
その暗い球体の中に
守るべきすべてが
あるかのように
たとえばそこに
紅い薔薇
暗さの中では
もはやその紅さも意味を持たないとしても
君にとってそれが
紅い薔薇であるならば
それは守られなければならない
思惟のふちから
どれほどの言葉が崩落しても
守ることで
守られる
そこにだけ生まれる
ひたむきな祈りがあるから
僕は君の夜に抱かれ
君は僕の夜に抱かれる
紅い薔薇が
幻にすぎなくても ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=380785
自由詩
2023-12-19T10:26:03+09:00
-
{ルビ歪=いびつ}な星の上で
バランスをとりながら
踊っている
踊っていないと
この星からこぼれ落ちるから
どこなのかわからないどこかへと
昔
この星は歪でなかったという
だからもっと楽に
もっと美しく踊れたという
けれど
それはお伽話にすぎないともいう
踊っている
踊れば踊るほど
この星は歪になるともいう
それも
お伽話にすぎないのだろうか
踊っている
時々失いそうになるバランスを
どうにか取り戻しながら
けれど時々いっそ
どこなのかわからないどこかへと
こぼれ落ちてしまいたくなりながら
昔
この星は歪でなかったと
それがお伽話にすぎなくても
過去への憧憬が
ふと未来へと反転することを
願ったりしながら
踊っている ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=380555
自由詩
2023-12-05T09:43:55+09:00
-
あるいは
壊した季節
散らばる破片を
君は今は
振りむかずともよい
君が遠くを歩いているあいだに
それをそっと
継ぎ合わす手がある
月と星の光を熔いたもので
ひとつひとつ
丹念に
そうして継ぎ合わされた季節は
もとの季節より
すこし歪で
壊れた
あるいは
壊した痕跡が
夜に仄かに光るだろう
いつの日か君が
ふたたび戻ってきて
それを目にするときに
おのずと知るだろう
それを継ぎ合わせた双つの手が
静かに合わさり
祈りのかたちとなっていることを ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=380444
自由詩
2023-11-27T10:38:39+09:00
-
故に{ルビ果敢=はか}なく捉えがたく
けれど
強く深く
轟きでもあり
静寂でもあり
満ちあふれ
けれど虚ろで
鋭く
けれどやわらかく
かぎりなく甘やかでもあり
はてしない痛みでもあり
そして ただ打ち震えて
数多の
失ったことも
得なかったことも
このことを識るためだったのならば
このことの
名付けがたさを識るために
全ての言葉が存在するのならば ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=380167
自由詩
2023-11-09T10:54:51+09:00
-
僕らの夜に降りそそぐ甘やかな流星
僕らはいつか来る終わりを
待ち望む気持ちを
ひそかに淡く抱きながら
今ひとときを寄りそう
銀の小さなフレームの中の
二人の写真
其処に閉じこめられた時だけが
やがてかなしく輝くことを知っていても
そのかなしみもたやすく擦り切れてしまうと
知っていても
終わりはきっと
僕らが望んでいたようなかたちでは
訪れないと
予感してしまっていても
今ひととき
僕らの夜を熟れた遊星はめぐり
僕らの夜に甘やかな流星は降りそそぐ
僕らは(僕とは 君とは 誰)
いつか来る終わりを
待ち望む気持ちを
ひそかに夢のように淡く抱きしめる ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=379996
自由詩
2023-10-29T08:57:23+09:00
-
僕と君とはふたたび会うだろう
そこには静かな風と
穏やかな光があるだろう
そして僕は
もはや語らないだろう
叶った夢のこと
叶わなかった夢のこと
ただ僕は云うかもしれない
見るためだけの夢もあったと
そしてそれは
とても美しかったと
そのとき君の眼差しは
どんな色を帯びているだろう
今はただ祈る
どうかその日まで
よい旅を ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=379792
自由詩
2023-10-15T12:40:21+09:00
-
僕の言葉と沈黙とで
その感触をさぐりながら
そうすることだけで
行ける場所があると
いつからか――
記憶の海より深く
予感の空より遠く
その道のりで生まれた
数多の言葉と沈黙は
やがてこの旅路の果てに
やわらかく眠れるように
うつくしい天蓋を 織りなしてゆくのだろう ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=379639
自由詩
2023-10-07T10:33:14+09:00
-
今此処で会うための身体に背いた僕らは
彼方で会う
今此処を縛る身体に縛られない僕らは
彼方で会う いつでも
いつまでも
僕らは互いに彼方のまま
何度でも会う
今此処の幻を抱いて ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=379463
自由詩
2023-09-29T10:30:21+09:00
-
あまりにも優しいので
感じるべき痛みを
感じることができない
あまりにも無垢な幻想が
あまりにも無垢なまま
此処を通りすぎることはできず
幾重にも折り畳んだ意識で
守るには もう遅すぎる
美しい旗のように
頭上に翻っていたものが
千切れて 消えてゆくけれど
涙も零れず
せめて やがて
静かな雨が降りますように
感じることのできなかった痛みは
何処の空に谺するのだろうか
おそらくそれを知ることもない
レクイエムを歌いながら
此処を立ち去る日が来るまでは ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=379260
自由詩
2023-09-19T09:48:02+09:00
-
いつしか雨はやんでいた
いくつかの傷はまだ響きやまないけれど
しずかに吹く風が告げている
ひとつの旅が終わったのだと
振りむくにはまだ重すぎる日々も
見わたすにはまだ遠すぎる日々も
いまはただそのままに
たどりついた薔薇の泉のもとで
寄り添い憩う
星々が夜空いちめん
紡ぎ交わした夢に守られて
あらたな旅がはじまるまでの
つかの間のこの夜を ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378756
自由詩
2023-08-23T09:41:24+09:00
-
白い雲の城砦がいくつも立ち
なかぞらを埋めつくす蝉時雨
他のどの季節にもない濃密さで
夏は君臨する
けれどその夏の中に
巨きな空洞がある
夏のあらゆる濃密さが
そこでは途切れてしまう
記憶も希みも 祈りでさえ
その空洞を満たすことはできない
ただいつどこで生まれたのか
(あるいはこれから生まれるのか)
わからない痛みが
かすかに 谺するだけ
この空洞を抱いて
夏はなおも濃密に極まり
強い色の夏花を咲かせ
そのあざやかさで 数多の意識に
自らの存在証明を 深々と刻印してゆく ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378630
自由詩
2023-08-15T09:48:28+09:00
-
もう誰も時刻を読むことのない白い日時計
茂みに囲まれた小さな池
茂みをざわめかせていた風がやむと
あちこちの陰にひそんでいた気配たちが
(それが何の気配なのか
私は名づけることができない)
つぎつぎと立ちのぼってゆく
立ちのぼるほどに透きとおり
あかるい夏のなかぞらへ消えてゆく
ひとしきり立ちのぼり消えてしまったあとの
完全な静寂
その底に
空っぽのあかるさを受けとめながら
紅く小さく咲く数輪の睡蓮 ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378519
自由詩
2023-08-07T10:37:09+09:00
-
そのさらに奥に
小さな部屋がある
くすんだ象牙色の壁紙
いくつかの黒ずんだ木の棚
そこには本 小函 硝子壜
円い置時計 何処かの土産といった風情の
人形や動物の置物 地球儀……
壁にかけられた絵の中には
円い緑の草の丘とその上の緑の樹と
いずれも見憶えがあるような ないような
褪せた薔薇色の肘掛け椅子に
君は不思議と心地よく坐っている
君の前の深い色の木目が美しいテーブルの上には
紅茶 果物 菓子
窓の景色は
見るたびごとに違う
この小さな部屋に似合うような
ひっそりした庭の眺めだったり
壁にかけられた絵とそっくりの景色だったり
時には 銀河の果てまで見はるかせたり
君はこの部屋の時間を
ひとりで味わいもするし
時折 客人が訪れもする
それはいつも君がこの部屋に入ってきたのとは
反対側のドアから
そんなときのために
君が坐っているのと同じ椅子も用意されている
君は客人と
気の向くままに語り しばし黙ってはまた語り
その誰も知っているような 知らなかったような
「孤独」と名づけた場所の
さらに奥にあるこの部屋を
君は名づけない
君はもう一杯紅茶を淹れ
果物を 菓子をもう少し出す
時に自分のために
時に訪れる誰かのために ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378394
自由詩
2023-07-29T09:52:12+09:00
-
夏の旋律がこぼれはじめる
空の青と光の白が
みるみるそのまばゆさを増してゆく
そこに君が居た
そのなつかしさは残酷なほどあざやかだけれど
でもそこはもう
通りすぎた場所
逆光の向日葵と蝉時雨
蝉時雨がふと熄んだときのひときわ濃い静寂
君と居るならばおなじ夏が
何度でもめぐり来ると信じていた日々の宝石
でもそこはもう
通りすぎた場所
絢爛たる雲の城を仰ぐ
遠雷が聞こえる
そういままた夏はめぐり来たけれど
ただ君はかすかに微笑む
たぶん僕もおなじように微笑んでいる
そこに君は居た
そこに僕も居た
虹が ながい夕映えが僕らを染めた
でもそこはもう
通りすぎた場所
これからそれぞれにまた
あざやかな夏を数多織りなすだろう
でもそこはもう
戻れない場所 ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378209
自由詩
2023-07-17T09:07:19+09:00
-
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で
六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=378070
自由詩
2023-07-05T10:07:17+09:00
-
静かな五月の夜
輪郭を失くした処に
複流し
伏流する時の中で
淡くオーヴァーラップするのは
私の意識と
君の意識か
(私とは)
(君とは)
谺のように出会う
輪郭を失くしながら
彷徨う
静かな五月の夜
薫る風の遠くで
泉のように湧きだすおびただしい貌
の中から
(君は)
(私は)
どれを選ぶ
たちどころに時は還流し
谺のように出会う
此処では 見ることは
触ることと ほぼおなじ
楔に打たれた記憶が
啼いていても
かなしみと名づける前に
ためらうことで
紡がれてゆく輪郭が
淡くオーヴァーラップして
(私の)
(君の)
そしてまたほどかれてゆく
漂う五月の夜が
薫る風を六月へと
送りゆくにつれて
ひらいたりとじたりする
時の瞼のもとで
谺のように出会う
(君に)
(私に)
雨のように降るおびただしい貌
の中から
選びながら
選ばれてゆく
その果てしなさに
けれど微笑みながら
輪郭を失くした処で
淡くかさなりあうのは
君の手と
私の手か ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=377756
自由詩
2023-06-11T08:42:18+09:00
-
{ルビ凝=こご}る五月闇
夏の色が濃くなるごとに重くなってゆく空
その空の重みに耐えかねて
虚ろになる意識
否 虚ろを装う意識
綴るごとにはぐれてしまう{ルビ頁=ページ}
どこへ
もうどこへも逃げてゆけない言葉たちは
五月闇に凝り
半透明に震えるばかりなのに ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=377600
自由詩
2023-06-01T11:47:30+09:00
-
蜃気楼が君を飼っている
どちらにしてもおなじことかもしれない
どちらにしてもつかのま見つめているだけ
春の午後に置いた
白い椅子から ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=377153
自由詩
2023-05-07T10:26:57+09:00
-
私を蝕する
陰鬱な雨と
あまりにもかろやかにあかるい陽射しと
半透明の眩暈に
浸されながら
{ルビ通草=あけび}が咲く藤が咲く
咲くものは数多あり
夢みるものも また
けれど
斑に蝕され
そこを風が吹き抜けるいたみを
何で覆えばいいのか
まだわからない
わからないうちに
四月の果てに
うっすらと扉が開いて
やがてはそこから
猛々しいほどの緑の風が吹き込んでくることを
咲いてしまった夢をみながら
待っている ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=377004
自由詩
2023-04-29T10:41:49+09:00
-
さみしい とか
かなしい とか
形容しても詮なく
雨は降り
菫の花を濡らし
己が
いともたやすく傷つく
ということに
また傷つきながら春の長雨
形容しても詮なく
けれど形容しようとしてしまう
己の何処かをこわしながら
遠くに薄雷が鳴って
かすかに 傷と共鳴し
ゆるやかに諦めながら春の長雨 ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=376774
自由詩
2023-04-19T10:59:34+09:00
-
どうしてもやわらかくなってしまうので
君のためにチューリップを画こうとしても
とめどなく狂いゆく遠近法 ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=376405
自由詩
2023-03-29T12:00:41+09:00
-
ゆく けれどそれは 誰にも見えない 私自らにも
見えない なぜならそれは 私の内側へと
生えていたから 見えはしないけれど ただ
たしかにそれは 翼であると 私は まざまざと
感じている その翼が 何色であるか その翼が
生えているのは いかなる空間に向かってかは
知らず ただまざまざと 日々 その翼が
大きく育ってゆくのを 感じている ある日
突然 私はくるりと裏返り 内側の空間が
外側となって そこで翼は 大きく羽搏くのかも
しれない ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=376239
自由詩
2023-03-19T10:38:18+09:00
-
耳鳴りがするので
そこに並んでいる言葉たちは
音を失くしてしまう
不定形の窓から
私がこぼれる
こぼれたのは
まだ私である
もう私ではない
ゆらめき
狂いゆく平衡感覚での
擬似飛行
擦り切れた海がひろがる
霧が私を掠める
まだ私である
もう私ではない
こぼれながら
擬似飛行をつづけてゆくのは
空中
それとも
水中
いずれにせよ
ゆらめき
狂いゆく平衡感覚で
耳鳴りの向こうに
記憶
あるいは 記憶のようなもの
その波間に
見え隠れするのは
まだ私ではない
もの
遠くで円舞曲を踊る双子塔
霧が私を掠める
不定形の窓から
見えていた
観覧車からはぐれたゴンドラ
こぼれたのは
ゆらめき
狂いゆく平衡感覚
擦り切れた海がひろがる
探している
見つけだすまでは
決して何を探しているか
わからない何かを
見え隠れするのは
まだ私ではない
もの
耳鳴りが去ったあとの静寂に
ゆっくりと浮かびあがる
言葉たちの透明な輪郭 ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=376078
自由詩
2023-03-09T12:02:11+09:00
-
箱庭を置く
箱庭の中に
箱船を浮かべる
箱船の中に
箱庭を置く
箱庭の中に
箱船を浮かべる
……
(内側は外側より大きい)
と誰かの声がする
すべての箱船から 箱庭から
ひとびとがいっせいに見あげる箱形の星座
{引用=「内側は外側より大きい」はC.S.ルイスのナルニア国物語シリーズ第七巻『さいごの戦い』に出てくる言葉です} ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=375698
自由詩
2023-02-15T11:51:08+09:00
-
この夜にさめざめと横たわる
月の光に傷つけられながら
この夜はあまりにも澄みわたるので
とめどない放射冷却――僕たちの
距離もまた冷えびえとして
けれど見つめている この距離が
月の光に傷つけられながら
さめざめと横たわっているのを
傷つけられるごとにかすかに波のように
震えるのを
時のこの距離の上を
数知れぬ面影の複製がひるがえるのを
とめどない放射冷却に
僕の身体もますます冷えびえと
けれど見つめている
夜が明ければ 僕たちのあいだは
距離よりももっとふたしかなもので
隔てられてしまうから ]]>
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=375247
自由詩
2023-01-19T11:29:29+09:00