愛国心を詠む[29]
2007 08/29 13:04
亜樹

祖父は、カミカゼになり損ねた軍人だった。
「お国のために、行くつもりだった」
「誰に強制されたでもない」
「後悔はあったが未練はなかった」
結局、日本刀と海釣りととにかく孫が好きな祖父が、爆弾を積んだ飛行機に乗るより先に終戦が来た。
今でも祖父は、時々私にそんな話をする。
夏が来るたびに、テレビで組まれる特番の出演者たちが話すのとは、少しも似つかない話をする。
その声には、憧憬さえあるように思う。
きっと、祖父は、今の日本のために自爆艇に乗ることは出来ないのだろう。
祖父はきっと畳の上で死ぬのだろうと思う。
私もきっと、カミカゼになんてなれやしない。
テレビは嫌なニュースばかり流す。
けれど、それでも私は。
家族が好きで友達が好きで色づく山が好きで古臭い建築物や漆器や織物やそんな伝統や文化が好きで。
これはきっと、カミカゼになろうとしていた祖父が抱いていただろう感情に
引けをとってはいないだろうと思うのだ、
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