愛国心を詠む[16]
2006 12/24 04:25
れつら

白い紙に
すきにかいていいよっていうから
赤いクレパスを手にとって
ためらって
なにも描けなかったきみを
だれもせめることなんてできないさ

わからずや
いちばんだいじなものには
いつだって逆らいたくなる
きみの育った山や 海や
きみのおとうさんとおかあさんが出会った街
そのふたりがデートに通った高速道路や避暑地
ぼくらが忘れてしまったような土地からたちのぼる褪せたけむりのねっこには
もうとっくに打ち捨てられた煙草の吸殻だけが依る瀬なくたたずんでいて
ぼくらはなんの根拠もなくただ燃え尽きようとしている

ほのおは赤くなかった
朝日の白さに気付いたぼくらは
もうなにかにもたれかかることはできなくって
それでも伸びている
その地面が忘れられた陸地で
沈まないかわりに これ以上伸び上がることもできない
かわいそうな島で
ぼくらは伸びていく
たとえそうは望まなくても
ぼくらの枯れた枝先からも あたらしい若芽が息吹くだろう

すべてが灰色になる季節
それが描けなくてぼくらは
しょうがなく赤と白でなぞりつづけた
いつまでもおわらない円周をずっとなぞりつづけた
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