2007 05/25 22:08
茶釜
昔、ルビーの湖の辺にどんな男でも虜になってしまうような美しい魔女が住んでいた。
ある日、魔女はとうとう世界中の男を虜にしてしまって、
もうその日が虜にしていない男との最後の出会いとなってしまう、
最後の男は「残り物」にふさわしくないくらい美男子で、
「取っておき」と言ったほうがよかったかもしれない、
魔女はすんなりと最後の男を魅了することのつまらなさに、
魔法で少し自分の姿を変えた。
そして、その容姿や魔力を駆使せずして男を魅了しようと決めたのだ。
だが、魔女の健気な努力は無残に崩れ去り、とうとう男は別の女と恋に落ちてしまった。
自分の非力な部分を悲しむと同時に、いつしか「嫉妬」という感情を覚えた魔女はそのやり場の無い熱い炎をどうすることも出来ず、
いつしか己自身が永久に消える事の無い紅蓮の炎と化してしまったのだ、
そして、その日より「最後の男」の姿も消えてしまい、
後には一個の茶釜があったそうな。
男を失った女はその日より毎日、その茶釜を火にかけて、
作った紅茶を飲みながら、男を偲んだそうな。
茶釜=おれ。