01/17 13:08
佐々宝砂
たとえば私には嫉妬もわからない。嫉妬するような状況が未経験かというと、そうでもない。でもそういうとき私が感じるのは疎外感で、軽いやきもちですらなかった。嫉妬に怒り狂う男女を目の前でみた。全然理解できなかった。どうもこれは欠損のような気がするのだ。憎しみも嫉妬もわからないあんたには、愛もわかりゃしない、と氷水をぶっかけられて罵られたこともあったが、困ったなあと思うだけだった。普通ならはっきり憎しみを抱いてもおかしくない状況に陥ったこともあるが、これは大昔なので自分にもよくわからない。もしかすると私はそのとき憎しみという感情を抹殺したのかもしれない。
肉親と恋人を亡くしたことはある。
そのときはきちんと悲しかったので、悲しみは欠損していないらしい。
ニュース見てはよく怒るので、怒りはちゃんとある。