夢を見たら書き込むスレ[82]
04/12 16:08
佐々宝砂

今さっき起きた(笑)どういう生活しとんのや自分(早朝バイトに燃えているだけです)。

またもすごく長い夢を見た。そのうち伊藤潤二の「長い夢」みたいなことになったら、
どないしょー。

夢の初期設定(笑)で、私は26歳、両親と祖父と田舎の一軒家に暮らしており、一人娘の私はみなにかわいがられている(事実とはものすごく異なる。念のため)。で、私は、うちにときどきやってくる植木屋さんが好きだ。身体を動かすのが好きで、気が良くて、でも短気で、馬鹿みたいに正義漢で、でもものを知らないわけじゃなくて、口を開くとぽんぽんと情報や洒落が飛び出てくる。口八丁手八丁で威勢がいい。私はこの男が家の垣根の槙を刈りにくるときなど、もうばんばんに相手を意識して、自分の部屋を片づけ、窓は開けてレースの白いカーテンだけ揺らぐように閉めて(なんだそりゃ)、話す機会をねらっている。

三ヶ月くらいして(伊藤潤二「長い夢」的三ヶ月ではなく、三ヶ月の時が飛んだ)、私と彼は友情以上恋愛未満しかし家族ごとおつきあい(笑)の仲になり、私の家で家族を交えてお茶など飲んで、ハイネとサッカー(どういう組み合わせや)の話をしていた。そのとき突然爆発が起きた。私は家族全部と、恋人になりかけていた相手と、自分の家とたくさんの本と、自分の左足の膝から下をいちどきに失った。

さてそれから10年後(また時が飛びました)。36歳になった私は左足に義足をつけ、障害者年金をもらって、フリーライターの仕事をもらえるときだけ働き、最低に近いようなアパートに一人暮らししている。そんなあるとき昔の友人から誘いがきた。楽しい集まりがあるからおいでという。暇だったし、楽しいことに飢えていたのででかけた。しかしその集まりというのが、やばいことこのうえない集まりだったのだ。具体的になんの団体なのかさっぱりわからない。わからないのだが、そのさっぱりわからない団体が、高級ホテルの広間を借り切ってパーティーを開催し、なんだかさっぱりわからない何かを推し進めている。誰かが壇上に立ち挨拶すると、その中身がほんとになんでもないことでも、みんなうわあっと熱狂する。この雰囲気は知っている。宗教団体か、催眠商法か、でなきゃ政治活動だ。なんかその手のたぐいだ。私はその手のたぐいが苦手だ。逃げたい。逃げようと思った。

ホテルの広間を抜けてエスカレーターで降りようとした。エスカレーターは一階ぶん降りたところでぐるりと大きく右に旋回し、そこで終わっていた。しかしエスカレーターのおりくちが柵で仕切られていて、私はルームランナーに乗っているような状態になってしまった。戻れない。先にも行けない。どうすりゃいいのだ。やけになって飛び上がった。

すると壁いちめんに手書きの手紙のようなものが張り込められた妙な部屋にぶっとんだ。手紙はみな、さっきの団体から逃げようとした人、団体の運営に異を唱えた人、団体をつぶそうとした人の手紙だった。みな悲痛な口調で自分の悲運を語ったあげく、「あの団体をほめたたえておけばよかった、あの運営はすばらしいのだ、あの団体をつぶそうとした私は死んだ。愚かだった。」という意味の言葉で結ばれている。床にふたつの首がころがっていた。すぐにゴム製の生首まがいだとわかったけれど、少しびっくりした。首にも手紙らしきものがついている。「私は愚かにも団体を蔑視したがゆえに死んだ」私はすこし怖かった。でもうんざりしていた。ゴム首を持ち上げ、窓をあけて、投げ飛ばした。

「なにするんですか」と声がした。ふりむくと私はまたさっきのパーティー会場にいて、私の隣には全身白で決めまくったあまりにも気障っぽすぎる三つ揃いの男がひとり。年の頃は27、8? 腐り始める寸前の果実のような年頃。爬虫類系統の顔だ。切れ長の目が鋭い、というかいっちゃってる。この謎の団体の首謀者のひとりに違いない、それほどのオーラがある。今はオーラを隠している。自分の美男振りを知っていて、しかもそれをいっとき隠す方法すら知っている。こいつは怖い。個人的におつきあいはしたくない。したくないが綺麗な男だ。こういうのはつきあわないで遠目に見てるに限る。

「煙草は吸いますか?」とその男が言った。はいと答えた。YHとだけ書かれた青白い箱から出てきた煙草はいやに平たくて、細くて、メンソールの味がした。「というわけで」とその男は言った。私は不意にからくりの一部がわかった気がした。あの爆発は。あの爆発のときこの男はまだ17、8だったのだろうけれど、あの爆発は。あの爆発の犯人は。「僕はあなたに手伝ってもらいたいのです」男が言った。とほーもなく魅惑的な声で言った。にっと笑った。私は頷いたような気がする。

でもそこで目が覚めた。
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