何故あなたは詩を書くのか?[263]
2009 03/25 06:11
竜門勇気

僕の頭の中にはいくつかのタイプライターとサルがいて、出鱈目にバチバチとキーをタイプしている。サルは色んな側面を持った僕の意識のかけらである。つまりは言葉を知ったサルということだ。
僕は日常生活の中で、いつもそのサルが打ち出す言葉を整理しながら暮らしている。時に人が僕に話しかけるなら、時にサルが投げ散らかした意味のありそうな言葉を喋るのだ。
また僕が酷く精神的に密度を高めたときに、サルたちの活動は一種の暴動となる。タイプライターは軋み、打鍵の熱量で煌々と輝く。絶え間なく真っ黒に文字を打ち抜かれた原稿が山となり、自重で圧壊して一つの岩になり、ほっとけばやがて僕自身をも巻き込む重力の落とし穴に成長していく。

僕がその言葉と意味の巨岩を砕き捨てるときその中に閉じ込められている何かに気づく事がある。それは「出せ」と僕をののしる。僕はそれを無言で火にくべる。
時々、運良く僕がキーボードの前に座っていて、程よくアルコールも回っていると八割ぐらいまでは掘り出してやることができる事もある。
概ねが歪で不愉快なものであることが多いけれど、それは先に述べたサルの影であり、やっぱりそれが僕の影であるので、僕はそれを見ながら教訓を得たり、サルのあしらいにうまくなったりする。
誰かが喜ぶとうれしいのでそれに冗談をまぶしたりもするし、頭の中の岩はほっとくとそのうち僕を押しつぶすので、その中の影を形にすることで僕は僕を救って来たし、この頭の中のサルとタイプライターが健在のうちは僕は詩を書くのだと思います。
久しぶりに普通の文章を長く書いたせいかへとへとです。消化のいいものが食べたい。
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