しりとりの詩 3 [38]
2016 10/01 18:39
ハァモニィベル
*
【流離伝】
白すぎるほどの雲をひとつ
浮かべている丘の上で
それをただじっと眺め入っている
のか 眠っている
のか
秋の丘のうえに
旅人はやがて知る あしくびの辺りに
はっきりと、雪の深さを
どんどん深くなっていくようなそれを
やがて、どこかに
菫の野が広がっている のか
水は涸れ石と風ばかりの曠野が続いている
のか
遠くない空のしたに
旅人は乙女に逢い
乙女は一個の桃を
みずみずしい桃を、旅人に手渡した。
桃はこの世のものであった
のか なかった
のか
雲のような時間(とき)のなかに
*
# 前作最終行の「し」を受けています。