○現代詩フォーラム短歌部○[483]
2006 04/11 06:24
こもん

《参加しての感想》
遠い記憶では、第二回短歌祭の合評会のおりに“次のテーマは「エロ」にしましょうか”というような内容のことを最初に言ったのは、確かわたしだったような気がします。
とても後悔しています。
難しかったです。
これまで3回行った短歌祭ですが、今回がいちばん手子摺りました。これまでのように草々に仕上げて投稿するという感じにはいきませんでした。
意図して“エロく”しようとすればするほど、どんどん空回りしてしまって、目も当てられない感じになってしまいました。身構えてしまったからでしょうか…、自分にとって手ごたえのある歌がひとつも詠めませんでした。
個人的な観点になってしまいますが、今回のテーマに臨むうえでわたしが志向したものは、“猥褻”や“猥雑”といったものでした。わたしにとって「エロ」は、そういったものと切り離して考えることができないものです。あとは“軽率”、“不謹慎”、“ぶっきらぼう”といったものにも魅力を感じています。「猥褻」や「猥雑」っていう字面にはすごい“エロい”ものがありますが、なんというか、即物的に詠みたいという気持ちがありました。
結果的には、満足できるものではありませんでしたけれど…。

《お気に入り》
最初みなさんそれぞれの歌集から好きな歌を思いつくままに選び取っていったら、どんどん増えていってしまってどうしようもなかったので、その選び取った歌のなかから、わたし的に悶えてしまう歌を数首選ばせていただきました。

ねえ誰も覗いちゃだめよ更衣室 蝶や獣や人魚の匂い(ふるるさん)
【コメント】
「更衣室」という言葉を想い付かれたふるるさんにものすごく嫉妬しています。
「更衣室」で「蝶や獣や人魚の匂い」っていうのは、すごく猥褻です。
「覗いちゃだめ」なんです、「更衣室」はすごく猥雑なところだから。

保健室 包帯ほどくそこそこに僕のかわいい痣を見せなよ(ふるるさん)
【コメント】
ふるるさんの「十四歳」というタイトルでまとめられている歌はどれもツボなんです。
最初、全部選んでしまいました。
この歌は、「保健室」っていうシチュエーションの設定に、「包帯」ときて、そして「かわいい痣」ですから、もう文句なしです。

あしたから猫になるから恥ずかしい名前をつけて呼んでもいいよ(ピッピ部長)
【コメント】
教育と学習っていうセットを、エロなシチュエーションとして実現するということは、SMプレイってたぶんそういうとこあると思うけれど、
そういう例をもってこなくてもけっこうあるように思っています。
あと、動物の要素もきっとそういうとき大事なのです。
この歌は、そういうエロの要素を見事に捉えていて、裏水脈的なエロさ(なんだそれ…)です。

尾骶骨ふれればきみは「そこそこ」と進化以前のプレイの名残り(本木幹事長)
【コメント】
たぶんですが、「尾骶骨」という言葉をひらめいたとき、そのエクスタシーに、本木幹事長はうっとりとしたはずですw
アクロバティック(意味わかっているつもり…)ですっ!!

誰にでもしないと言うよりそのくちで白い腿をもっと泣かせて(簑田さん)

ばんそうこうを女の花びらに貼る 朝の無意味なアトリエにて(芙卯さん)

まるい字面よりも衝動走り殴り書きで刻んでよ放課後(芙卯さん)

涙目で「バスタブの縁に上ってたかどうか教えて」なんて無意味だ(合耕さん)
【コメント】
何かの本で、フランス語の“absurde”という言葉に宛てられる「不条理な」という訳語は、なにか深刻なものを思わせてしまって、
“absurde”がまずもっている「バカらしい」「あほらしい」といった意味を捉え損ねているみたいな記述を読んだことがあります。
いわれてみれば、「不条理」ってよくいわれるカフカとかベケットのテキストって、笑わずには読めないよなあ、と思ったことがあります。
合耕さんのこの歌は、とてもおかしくて、ナンセンスを痛感させられるのですが、でも、なんかエロさも感じてしまうのですよ。
どうしてでしょ…。

そこそこに削った鉛筆とすれすれに伸ばされた腕に当たりたいだけ(合耕さん)

放課後に発声練習する君の猫がぴくんとするほどさわわ(関根さん)

午後三時、夏、部活棟の裏庭で黒猫が下着を舐めている(まもりさん)

こしょこしょとこそこそこそばすそこここがまるで園児のぬいだ靴下(まもりさん)
【コメント】
「まるで園児のぬいだ靴下」!!
なんかにおいとかまでしてきそうな猥雑ぶりです。
編目のひとつひとつまで猥褻です、「園児のぬいだ靴下」はw

しずんでく鎖骨の曲線濃やかに字面のあなたをなぞった深夜(桐原さん)

指先できみのりんかくたしかめて境界線の無意味をおもう(エトさん)

「こんな事してあれだけど、この件は誰にも言うな。ピーちゃんにもだ」(魚虎さん)

永遠に解けない魔法の味がした君の手首の傷なめた春(魚虎さん)


クロエさんの歌集「忍び音」は、一連の流れがあって、その流れのおもしろさを大事にしたいので、一首抜き出すことはしませんでした。ということは、歌集として好きです。



コメントは時間を見つけて順次付けていこうと思っています!!!
前回は付けられなかったので…。
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