おすすめ小説スレッド[57]
2005 01/20 00:02
岡部淳太郎

>>56
日野啓三さんの魅力は、普通の人間の日常や記憶を飛び越えているところではないでしょうか。いや、飛び越えているというよりも、地上的なものが突然宇宙とつながってしまう、一個人の記憶が全人類の記憶とつながってしまう、というべきでしょうか。観念的なものを描いていても妙にリアリティがあるというか。うまくいえなくて申し訳ないのですが、この人の場合、受け入れられる人はすごくのめりこんで読んでしまうけど、受け入れられない人は全然駄目と拒否反応を示すことも多いのではないかと推察します。哲学的な堅苦しいのが苦手だとか、人物描写がなってない(特に女性がしばしば巫女的なこの世のものならぬような感じで出て来るので)とか言う人もいそうです。
芥川賞を受賞した「あの夕陽」などの初期作品では私小説的色合いが濃いのですが、80年代に発表された一連の都市幻想小説でよりフィクショナルな世界を構築してからは、純文学としてもエンターテインメントとしてもすぐれた作品を多く発表するようになりました。「天窓のあるガレージ」は、ちょうどこの都市幻想小説の時期の入口に当たる作品ではないかと思います。
講談社文芸文庫から長編「夢の島」「砂丘が動くように」短編選集「あの夕陽・牧師館」の3冊が出ているので、そのへんから入っていくのが妥当ではないかと思います。僕も最初に読んだのは「夢の島」でした。

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