おすすめ小説スレッド[33]
2005 01/02 01:28
佐々宝砂

下のリストから漏れてるもの。
藤枝静男『田紳有楽/空気頭』。かなりむちゃくちゃ。だいすき。「欣求浄土」も捨てがたいのだが、この人の一冊となればこの本。まずは「田紳有楽」、最初はゆるゆると、いかにも私小説的に割と普通にはじまる。でも15ページめ、「私は池の底に住む一個の志野筒形グイ呑みである」、この文章を読んでヘンだと思わない人は、何を読んでも驚くまい。

 で、このグイ呑みが金魚のC子と恋に落ち、愛の結晶としてなぜかミジンコが生まれてくる。さらに読んでゆくと、今度は新幹線並のスピードで泳ぎ回る茶碗だの、蛇の姿の偽阿闍梨だの、実は空飛ぶ円盤である丼鉢だのが登場し、どんどん無茶苦茶になってゆく。

 どうやって収集つける気だろうと人事ながら心配になりながら読み進むと、最後は、ご詠歌の合唱でわけがわからないまま大団円。なにしろわけがわからないままの大団円だから、ネタバレもなにもありません。すごいナンセンス。ブルトンも逃げ出すこのシュールさ。でも、書いてる方はひどくマジメ、これは紛れもなく優れた文学だと思うわけですよ。
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