映画館ポエム座[30]
2004 12/25 02:05
石畑由紀子

『桜桃の味』 監督:アッバス・キアロスタミ 1997年イラン

イスラム信教域での自殺願望・その行為がどれだけ背徳に当るのか、私は詳しくを知らない。それを知った上で観賞すればもっと興味深い内容だったと思う。主人公の男……自殺の手助けをしてくれる誰かを探し黙々とレンジローバーを走らせる……この時点で男はある程度裕福なことが伺える……と、道すがら男が出会い、会話する様々な人たち。主人公はもはや男であって男ではなく、出会う人々もまた人ではなく、思うにこの映画の主役は概念としての『死(=男)』であり『生(=出会う人々)』であると考える。概念を映像化させるために人物が必要だったのではないか。人間の死生観・思考の具象化に成功していると感じる映画。
驚きというか、半ば唖然とさせられるラストシーンに何を、そして生と死のどちらを感じとるかは観る者の死生観次第なのかもしれない。 私たちはあのシーンに問われ続けているのだと思う。

#>>19 渡邉さん、この映画『笑いを狙ってなくて、静かで、せりふが少なくって、長回しが多くて、無駄なBGMがなくて』まではクリアしてるのだけど『映像が美しい』がなぁ、渡邉さんの求めている美しさとはちょっと違うような気がして、でもロードムービーで個人的には好きなので、控えめにレコ。もし機会があったらどぞ。
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