2010 08/26 14:07
深水遊脚
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎夏海著(ダイヤモンド社)を読んで
高校野球の話であること、経営に関係すること、ものすごく話題になっていることがこの本を買い求めた理由だった。そしてそれなりに楽しんで読んだ。表紙にも少し惹かれたかな。でもブックカバー無しに持ち歩くには勇気がいる。
前半は普通の野球部が描かれている。ダメとは言わないまでも、大会でいいところまで行こうという目標のない部活はこんなところだったと思う。その状態から甲子園を目指す集団へと野球部が変わるうえで必要なことが、ドラッカーのマネジメントの引用を絡めて書いてある。設定では、二年生の夏に野球部に入部することになった女子マネージャーの川島みなみが「野球部を甲子園につれて行く」と決めてしまったこと、マネージャーの仕事を考えるために衝動買いでドラッカーの「マネジメント」という本を買ってしまったことから物語が始まる。
最初のうちみなみはコミュニケーションもままならないが、入院中の元マネージャー宮田夕紀の協力もあり、部員と監督ともう一人のマネージャー北条文乃の考えていることと能力を知るところまできた。ある敗戦をきっかけにチームもひとつにまとまった。そこからは「マネジメント」をもとに考えた管理体制や練習メニューが面白いようにはまって行く。何よりも一人ひとりがやりがいをもって野球部の活動に取り組むようになり、のちにみなみが多少不安定になったときも大きく崩れないまでになった。
これだけで地区大会で勝ち進み、甲子園出場となるのでは現実味がないという考えからか、物語ではチームが「イノベーションに取り組む」として、2つの戦術を捨てる。それはボール球を打たせる投球術と、送りバントである。捨てる代わりに、エラーを恐れない練習、走塁を鍛える練習に取り組むなどして作戦のデメリットを軽減することを徹底している。夏の大会の各試合ではこれらの成果が実ることになる。
人の気持ちと向き合い、考えていることを引き出してチームが強くなってゆくところが鍵だろうと思う。そしてその先にはいろんな成果があり、甲子園出場はその可能性の一つでしかない。違うチームがこのノウハウそのままに甲子園出場できるわけではない。
ビジネス書はたくさんのことがぺらっぺらに書いてある。でも到底そのすべてを実現できはしない。所詮自分に合わないやり方はできない。ちまたではドラッカーの本が溢れている。でも組織の現場でそれをどのように適用するかは、これくらいの手軽なフィクションで知ることのほうが有効である気がする。
この本は使える。時々会社に持って行っている。表紙は隠しているけれど。