2012 07/15 09:37
佐々宝砂
詩のことは最近知りません。というかもともと知らないかもしれません。
以下は詩人に限らない一般論です。
何かを言ってそれが嘘であったとしても法に触れない場合があります。たとえば詐欺罪が成立するためには、「財物または財産上不法な利益を得るために、人を欺き、その行為によって相手が錯誤(勘違い)に陥り、その錯誤に基づいて財物を交付、または利益を得させたこと」が必要です。嘘をついても相手に損害が生じず嘘をついた本人に利益が生じなければ詐欺罪は成立しません。もっとも民法上の不法行為と認められる場合は、損害賠償責任が生じます。
で、何を言いたいかというと、嘘をつくことそれ自体より損害を生じさせたことのほうが問題で、だから法律はこのように詐欺罪を設定しているのではないかと思うのですね、私は。
そしてこれいま言ったのと逆な話ですが、真実を言っても責任が生じる場合があります。日本では、具体的事実を摘示することによってある人の社会的評価を低下させた場合、名誉毀損罪が成立します。大事なことなのでもう一度別な言い方で書きますが、名誉毀損罪は、事実の有無、真偽を問わず、相手の名誉を毀損して実際の損害をおわせたときに生じます。ただし公共の利害に関する事実に関係することを専ら公益目的で摘示した結果として名誉毀損に至った場合、事実であることを証明できれば処罰されません。
少なくとも法律上では、嘘であるか事実であるかにかかわらず、相手に損害を与えたかどうかが問われているようです。