批評しましょ[500]
2005 11/23 03:11
白糸雅樹

>495

 詩人の飼い方/ケムリ
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=51717

 う〜ん、たしかにそこそこおもしろい作品ではある。私も、読んで愉しませてもらった。しかし、この作品に、「詩人」であろうとしていると思われる人(いちいち名前は挙げないが)がポイントを入れているとなると、私もちょっとひっかかってくる。

 田代さんは、
>>いわゆる〈詩人〉イメージが的確かつ非常に諧謔的に記述され、贔屓目少なく喝破する痛快さによって多くの支持を得ている。

 と記述しておられるが、はたしてそうだろうか? この文の後に続く、
>>文章もこなれたものだ、たいへん面白い読み物として成功していると言えるだろう。ケムリ氏は物のよく見える頭のいい書き手であろうし、それを明確にポイントする・感想を書くというやり方で支持した本フォーラムの読者達も文を楽しむということを知っている。

 は私も全面的に賛同するが、私は、この作品で、「いわゆる〈詩人〉イメージが的確に記述された」とはとても思えない。ここに描かれた「詩人(のヒナ)」は、「いわゆる〈詩人〉イメージとして流布されている」という幻想を人々が共有しているもの、あるいは、「こういう〈詩人〉像が所詮、イメージにすぎないということを認知する人々が、なんらかの優越感を持って愉しむことができるイメージ」にすぎないのではないか? それをいうなら、「いわゆる〈詩人〉イメージが的確に記述され」ではなく、「〈いわゆる詩人〉イメージが的確に記述され」と言いたいところである。(括弧の位置を変えただけで、それこそ、田代氏に対するいちゃもんと取られてもしょうがない異論なんだけれど。)

 この作品に出てくる「詩人(のヒナ)」のイメージが、例えばこういうところで、あまりにも、類型的というより、むしろつまらなさとして感じられた。(類型的なだけならば、おもしろい。しかし、類型的なのではなく、「こういうのが類型でしょ」という発想の貧しさを感じてしまったのだ。)

 ・アングラな場所を好む
 ・「最近時折街で見かけるフリフリの・・・あの、西洋人形みたいな格好」を始めたら、それは詩人ではなく、どうしようも無い詩をばら撒く状態
 ・アニメみたいな表紙の小説を好むと、手遅れ
 ・自然破壊についてしか語らないのは、プルーストより美味しんぼを読んだせいかもしれない。
 ・朝日新聞をスクラップするようになったら手遅れ(作品上ではスクラッチになっていますが、作者ご本人が、スクラップの意味で使った、と書いておられるので、スクラップする、と表現させていただきますね。)

 この文章は、単に〈詩人〉を揶揄するものではなく、「詩人の飼い方」というタイトルの、作品なのだから、これらの発想はどうもあまり面白くは私には思われない。

 詩人を飼ったり、育てたりするなら、むしろ、ゴシックロリータ風の服装を極めさせ、あるいはスニーカー文庫やヤオイ本に傾倒させ、あるいは環境活動家の時期にどっぷりつからせ、一見反体制にみせかけた体制側新聞を十全に分析させたほうが、よほど大成するんじゃぁないか?? ゴスロリ風の服装を好むことと、例えばオタク的に服装にかまわないことと、例えば和服を好むことと、それらのことは、詩人度を測る物差しとして、どれも有効であり無効であり、一例として一つを挙げて「手遅れ」と否定するのは、どうも自省の念が足りない気がする。

 これは単に私の好みでわがままで、ケムリさんに対するいちゃもんにしかならないかもしれないが、作品全体を通して、「およよ、これは発想外だったぞ」というおもしろさがない〈詩人〉の揶揄は、私には、どうしても作品として、高くは評価できないのだ。

 冒頭で、高いポイントを詩人から得ている事態が納得できない、と書いたが、もちろん、ポイントを入れたら詩人としてどうか、とかそういうことを言いたいわけではない。たしかに文章はこなれているし、揶揄としておもしろい部分、観察として精密な部分も沢山ある。(スリッパの用意を勧めるあたり、ほんとうに巧い。)それに対してポイントが集まるのは、きわめて当然だと思う。

 ただ、それが〈詩人〉イメージが的確であるからかであるかのように言われると、うにゅにゅ、とひっかかってしまうので、ここに考えを纏めてみた次第。

 異論反論などおおいにお待ちしています。この詩の良さをおおいに語る人にも出てきてほしいな。たのしみだ。(私の筆の遅さはなんとも申し訳がない。でも私以外に語ってほしいんだー。いちいちレスはつけないけれど。)
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