2008 04/03 01:41
楢山孝介
「リスは有袋類」(小池房枝さん)即興、長め。
有刺鉄線にトカゲが
引っ掛かってもがいていた
助けてあげなよ
と言ってくれる人がいないので
助けてあげなかった
有刺鉄線の上を越えていくことに
昔はためらいがなかった
ボールや靴や木の枝のために
超えなければならない時が
たびたびあったから
交差点の脇の木の下で
アライグマが死んでいた
外傷は見えなかった
近所の農家が
毒入りの餌でもまいたのかもしれなかった
アライグマにつく寄生虫の話を読んだことがあったので
手は出さなかった
写真も撮れなかった
家に帰ってパソコンを立ち上げ
Googleでイメージ検索してみると
死んでいたのはアライグマではなく
タヌキだということが判明した
野良アライグマが増えている
という報道のことばかり思い出していたから
なんでもアライグマに見えたのだ
リスは有袋類
という話を聞いて
あんな小さな生き物のお腹の袋に
さらに小さい子どもが入っているなんて
と感激して
得意になって吹聴した
一緒にリスを見に行こうよ
なんて言ってくれる人の
薄ら笑いには気付けなかった
リスのいるところなんて
ニューヨークにある大きな公園ぐらいしか思い付かなかったので
ニューヨークへの行き方を調べた
ついでに袋の中のリスの画像を
と再びイメージ検索してみると
一枚も見つからなくて
リスは有袋類ではない
ということまで知ってしまった
有刺鉄線に引っ掛かっていたトカゲが
もがくのをやめて
動かなくなっていた
トカゲは有袋類ではないから
袋が破れてしまうことはない
トカゲは小さくて爬虫類だから
アライグマではない
今日は有刺鉄線を超える
用事はない
明日もきっと
ない