題名だけのスレに詩をつけるスレ[13]
2008 10/16 22:07
aidanico

#小池房枝さんのお題から


「グッドラック九月のライラック」

ライラックってどんな花、ライラックってどんな花…
掠れて上ずるような特徴的なボーカルで始まったこの曲は、僕の脳味噌にタトゥーのように深く刻み込まれていった。このフレーズの後にも続くようにライラックがどんな花なのか、僕はよく知らない。ただ、受験勉強用に買った参考書の英単語を覚えるよりは、この花がどんな花なのか想像を巡らす方が愉しいことぐらい、誰にだって判断が付くだろう。九月頭に行われた実力テストはお世辞にも良い結果とは言えず、担任からは「このままではランクを下げることになるぞ」なんて学園ドラマではおなじみの台詞を聞かされる羽目になっていた この僕は、親に「参考書を買いにいく」と言ってはHMVやタワレコにいって漁るようにCDを買い集めた。そんな中、友達に勧められて買ったロックバンドのCDの一曲が、この歌だった。ライラックという花自体にはなんとなく小さい花で、可愛らしいイメージがあったものの、ギターに思いっきりディストーションをかけて世界の終わりでも唄いそうなバンドが、この歌を歌っているって、なんだかミスマッチで面白いし、メロディーもキャッチーなもので、口ずさみやすかった。僕は授業中に想像上のライラックを描いては授業そっちのけで色を塗り、色とりどりのライラックでノートを埋め尽くした(お陰で数学のノート提出の時には数式の周りをカラフルな花が取り囲んでいた)。生物の先生にはお前そんなに遺伝子学に興味があるのかと訳のわからない質問をされ、曖昧な笑みで答えなければならないという有様だった。それから十月に入っていよいよ勉強が忙しくなり、勉学費用の横流しも親に見つかり激昂され、仕方なく勉強せざるを得なくなった。ipodに入ったライラックはいつしか英単語の発音や古典の単語に変わっていった。
それから五年、僕は大学生活最後の年を向かえ、内定も決まり、アルバイトに身を費やす毎日だ。仕事で忙しいとき、就職に不安を感じたとき、僕はいつかの歌を、色鉛筆やマーカーで彩られたノートを掘り返しては思い出す。
ライラックってどんな花、ライラックって、どんな花…
その花がどんな花なのか、僕はまだ知らない。


#名曲「ライラック」はBLANKEY JET CITYの三枚目のアルバムから。
#花言葉に青春の思い出、友情などがあるそうです
#語感が好きで遣わせて貰いました。散文詩と言うか小説っぽくなりましたが、そのうち同じタイトルで同モチーフの詩もかいてみたいです
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