好きなフレーズ その3[403]
2008 04/11 00:24
PULL.

……月夜の描写が長ったらしく、凝りすぎている。トリゴーリンは、ちゃんと手がきまっているから、楽なもんだ。……あいつなら、土手の上に割れた瓶のくびがきらきらして、水車の影が黒く落ちている――それでもう月夜ができあがってしまう。ところがおれは、ふるえがちの光だとか、静かな星のまたたきだとか、しんとした匂やかな空気のなかに消えてゆくピアノの遠音だとか……いや、こいつは堪らん。

# チェーホフ、「かもめ」の第四幕より。
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