2007 02/22 23:51
ふるる
「想」
初夏になると、あんなに咲いていた梅と杏の花が全部散り、青々とした小さな果実が実る。
丸々太ったところでもぎとって、ヘソを楊枝でほじり梅酒と杏酒にする。
焼酎と氷砂糖につかった、いい匂いのする梅の実を齧るのが好きだったのだが、たまに1つしか食べさせてもらえなかった。
地面に落ちた杏には蟻がたかる。大きすぎる杏は手に余るようで、蟻はいつまでも杏の上を言ったり来たりするだけだった。
梅雨の頃は毎年咲くあじさいが次々と咲いた。ピンクや紫や青。雨粒に合わせて頷いている、小さな花のかたまり。
かたつむりが広々とした葉の上をゆっくり這っている。
毎年、同じ蛙が同じ場所に来て鳴くのが、不思議だった。
どこで雨漏りをしているのか、家の中にいると、ぱた、ぱた、と雫の垂れる音がする。
その間隔が早くなれば雨も激しくなり、遅くなればやがて止むのだった。
私はガラス戸の張ってある二階の廊下に寝転がり、本を並べていつまでも読む。
(400文字)