雪あかり
落合朱美



夜がほの蒼いのは
雪が舞っているから

すこし窓を開けて
吐息が白く夜気に放たれ
雪と交わるのをながめる

手を延ばせば舞いおりて
けれどその冷たさは
触れるまもなく掌に溶ける


いつかの雪の夜に
あなたと歩いた
かじかんだ手をつなぐこともなく
ただ肩を並べて歩きつづけた

わたしよりもすこし高い位置で
吐き出される息の白さと
ときおり触れた肩のぬくもり

それだけがまるで想い出みたいに
それしか思い出せない記憶みたいに
真冬の空に浮かぶ幻燈みたいに


ああ、雪が

と、言いかけて
その先の言葉を言えなかったのは
雪あかりの中であなたの瞳を
まっすぐに見てしまったから

ほの蒼い夜を
わたしはすこし恨んで
言葉は白い吐息にかわった








自由詩 雪あかり Copyright 落合朱美 2007-01-04 21:46:53縦
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