伊勢丹で朝食を
虹村 凌

本当なら君といたい一緒に 
煎餅布団の中で
君の背中の後ろ
勝手に約束してる 
今度生まれた時の事を

みんなが知ってるつもりの
ほんとうのこと
強がってた俺が泣いてる 
みんなが帰った後
お煮染めの匂いの中

君と歩くは祭りか修行か 
手も掴めずに先を歩く
袖を一瞬だけ引っ張るその手を
掴み返せずに
思う
座椅子になりたい
座椅子になりたい

一秒だけでも長生きする
君よりも必ず一秒以上
そうしてすぐに追いかける
訪れる朝に
何の前触れも無く昇る朝日に
アウトオブロマンチカ
何も覚えていない君と
覚えてばかりいる僕の
遠い遠いカサブランカ

夢を追っても孤独は恐い
だから新宿ハイキック

俺の目が
俺の耳が
キャッチしたオブジェクト
文字に化けていく
君の目が
君の耳が
キャッチしたオブジェクト
キャンパスに染み込んでいく

だから新宿ハイキック
君がキャンパス塗りつぶしてる時
俺のラブソング
どんどん溶けてく
空に
君の知らない恋文
俺の知らない日本画

煙草をくわえて歩きながら
俺は半分夢の中
気がつけば新宿はもう冬だった
俺は半分夢の中
もうまっぴらだ
遠くまで行く
もうまっぴらだ
もう行かないでくれないか
これ以上遠くには
俺は半分夢の中
新宿ハイキック
嘘ばっかり
渋谷でウトウト
祐天寺でゲロ吐いて
それでも半分夢の中
嘘ばっかり
新宿ハイキック

イイ事ばかりは続かない
置き引きにあった次の日に
ネームプレートも無くしちまった
メェルの返事も来ないまま
金が欲しくて働いて眠るだけ
開き直ってヘラヘラしてても
メェルは来ないし会えもしない
電話するようなガラでもない
昔に比べりゃ近づいて
ちったぁ幸せに見えるのかな
涙ぐんでも始まらない

最終電車で帰る
丸い背中
何も変わらない事に気づいて
坂道の途中で泣き崩れる
脚を止めた
遂に
自販機の横で座り込んで
朝焼けまでおやすみなさい

雲隠れ
空白

退屈な仕事の合間に
君からの電子手紙
遠くから
我が侭なお前にイカれてた
遠くからのレタァ
レタァ
お前の匂いのレタァ
読めない滲んで


悪い予感が夜空に輝く
本当さ
確かに見えたんだ
星なんかじゃない
悪い予感が降ってくる前に
親戚を殺して香典を集めよう
その金で遊ぼう
昭和81年のボニー&クライド
苦労なんてないさ
旅に出よう
明日は無くても
苦労なんてないさ
歌を歌うから
歌うのはいつも下らないラブソング
安っぽいラブソング
何処かで聞いたような
そんなラブソング
そう君が好き
それ以外の言葉は知らないし
それ以外の言葉は言えない

ブルーな時にお前の名前を呟く
どうなる訳でも無い
それでも呟く
涙ぐむだけ
何時までたっても上手く言えない
こんな調子
そんなラブソング

何時までたってもこんな調子
何も言わないでいたら窒息シちまう
させられるよちはマシだけど
馬鹿のフリして道化て歌舞いて
生き延びる
新宿ハイキック

伊勢丹で一緒に朝食を


自由詩 伊勢丹で朝食を Copyright 虹村 凌 2006-12-30 23:11:23縦
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