落ち着かないチキンラーメン
虹村 凌

チキンラーメンの鍋で茹でた
チキンラーメンを半分こして
食べた
ちゅるるるる
ちゅるるるる
髪の毛が土鍋に入ってるのに
僕の食べ方が汚いと気にする
それはディスタンスの問題だよ
俺と君より土鍋と君の距離が近いんだもの
ほら
僕等はウィスパーできない距離で
チキンラーメンを半分こしてるの
ちゅるるるる
ちゅるるるる
彼らはウィスパーの中で泳いでるのに
白い破片がラーメンの中で泳いでるのに
僕の目は君の身体のラインの上を泳いでいるのに
こっちを向いてよハニィ
なのにちゅるるるる
なのにちゅるるるる
すべり込むチキンラーメン
君の口の中へ
吸い寄せられるように土鍋に近づく
ゆっくり
ゆっくり
振り向く君
飛び退く俺

「食べる?」
「…うん」

ちゅるるるる
こんな落ち着かないチキンラーメンは初めてだ

咳き込んで鼻から麺が出たのを君は知らない


自由詩 落ち着かないチキンラーメン Copyright 虹村 凌 2006-12-28 23:10:59縦
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