幸福についてのモノローグ
佐々宝砂

ストーブのうえで
かたかたと音をたててお湯が沸く
カルキ臭は抜けたけど元をたどれば水道水
だったそのお湯で
インスタントコーヒーを入れる
(特価980円のエクセラ)
明日の朝は8時から仕事なのだけど
なんでだか寝損ねたし
実は眠る気もなかったりする
死んだひとの歌声を連続再生しながら
隣室からきこえるいびきに少々辟易しながら
ちっとも返事をよこさないやつにメールを送る
返事がほしいからメールするのではなくて
単純にメールしたいからメールする
それからわざとらしく空をみあげる
星はひとつもみえなくて
でもあの雲のむこうにはいつだって星があって
そこに手が届かないとしても星があって
(それがわかってるから私は星をほしがるんだ)
熱いコーヒーはそれなりにおいしくて
私は今夜もかなり幸福なのである


自由詩 幸福についてのモノローグ Copyright 佐々宝砂 2006-12-26 01:28:44
notebook Home 戻る  過去 未来