怒濤新宿大往生
虹村 凌

信じる奴しか救わない神様なんてクソ喰らえだ!
と叫びたい衝動をどうにか抑えつつ煙草を吸う
信じなきゃ地獄行きって脅迫じゃねぇか!
と叫びたい衝動をどうにか抑えつつ珈琲を飲む
貧弱な軽自動車を街宣車がぶっ飛ばす妄想に浸りながら
皇居に向かって敬礼を繰り返す妄想にも浸る
妄想浸りでグショグショの背中
張り付くワイシャツを隠すロングコート
内側には勿論模造の日本刀が輝くのだ
お前等覚悟しやがれよ
一人残らず仏滅の日の恐ろしさを噛みしめろ

と煙草を投げ捨て踏み消す一歩
捕まれる肩に驚き振り返る
紺色の制服と無線から響く声
袈裟懸けのタスキに輝く「路上喫煙禁止」の文字
喫煙所から3mでの悲劇
力が込められた手の平
動かせないこの肩
ゆっくりとしゃがみ込む
微笑む国家権力
投げつける吸い殻
逃げるラバーソール

情けなく息切れ
体力不足と脂肪増加の哀しいお知らせ
更に追い打ち切ないお知らせ
本日は営業を終了しました
だってする事ないんだもんと店員
わかってるって
早かったり下手くそだったり
そら仕事中に電話しちゃうよね
後ろから投げキッスの後に中央の指を立てて微笑む
ヤの字に睨まれてまたも逃走
敗走退却是我人生
嘘だって

何でもいいけど
幸せなお前等に倖アレ!


自由詩 怒濤新宿大往生 Copyright 虹村 凌 2006-12-25 23:15:59縦
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