或る夜の出来事
馬野ミキ

夜の神が言う
「眠れない人は手をあげてくださーい」
最初は皆息を殺し、ふとんの中から辺りの様子をうかがっていたが
もっとも臆病な少年、インバビロニアの血を引く息子パテロモスクベスクァテイルが
やがて大きな声で返事をし
その美しい褐色の右腕をまっすぐにあげると
(そう、それはまるで天を指し示すかりように!)
皆いちように大声で、或いは泣き叫びながら
(或いは糞をもらすような仲間もなかにはいた)、
ああ、本当なのです
眠っている人間などは一人もいなかったのです
夜の神は降伏を認め
世界にはいとも簡単に平和が訪れました。







-----------
2000年7月27日




自由詩 或る夜の出来事 Copyright 馬野ミキ 2006-12-23 20:07:13
notebook Home 戻る  過去 未来