【短歌祭】赤いつぼみ
容子

  膨らんだ真っ赤な少女が綻べば真綿の雪に椿がぽとり

  体内で春を待ちきれずに芽吹く血潮に染まった椿のつぼみ

  花びらを散らさぬように雪の上そろりと歩くも染みが点々
 
  赤い紅ひく母さんの寒椿、まぼろしを越えこの身へ宿る

  払っても抜いても肢体に絡む枝、寒雨に晒せど花ひらく赤

  教科書の「冬は命が眠る」など真っ赤な嘘だと椿を手折る

  つらら針、未練を断ち切るかの如く置いてけぼりの気持ちに刺さる

  両足をつたい滲んだ赤い雪泣いては染まる雪うさぎの目

  かじかんだ凍った手足と裏腹に熟れたつぼみは少女を咲かす





短歌 【短歌祭】赤いつぼみ Copyright 容子 2006-12-20 23:30:18縦
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