金星列車
肉食のすずめ

かたたん かたたん

夜のようだ

かたたん かたたん

まだ夜のようだ

かたたん かたたん
かたたん かたたん

いくつもの夜を越えて
目覚めても
やはり夜だった
眠るよりないから
夜なのかも知らん
寝台の窓は黄色の嵌め殺し
流れ行く景色
樹も畑も空も
時折見える人も
黄金色
金星には
昼も夜も
無いのかも知らん
そもそも
こういう色なのかも知らん
そんな情報は
知らん 寝る

かたたん かたたん
かたたん かたたん

二つくらい夜を越えて
目を開けたら
隣の寝台の
大きな目と合った
金星人は皆目が
大きいのかも知らん
口も大きいな
  おはようございます(おはようございます)
  あなた地球人ですか?(はい、そうです)
  地球は海が多くて素敵ね(ええ、私は海が好きです)
  どこの国に住んでいますか?(日本です)
  日本とはどんな国ですか? (・・島の集まりです)
  他には?(それだけです)
それだけだ
金星語はうまく話せない 寝る

かたたん かたたん

一つの夜も越えないうちに
金星人の声
  ねえ 日本の歌を歌って下さい(うーん)
 ふるさと を歌う
間違った気分
島倉千代子にしときゃよかった
不思議な顔で(恥ずかしい顔で)
寝返ってリュックサックをあさる
さっき食べた
魚フライを包んでたアルミホイル

かたたん かたたん

  (日本人は皆)
  (こういうものが作れます)
振り返って渡す銀色の鶴
喜んでいる
ので(あげます)寝る

かたたん かたたん
かたたん かたたん(黄金色の光の中で)
かたたん かたたん(銀色に光るあの鶴は)
かたたん かたたん(さぞかし目立つでしょう)
かたたん かたたん

いくつかの夜を越えて
目覚めたらいない
あの金星人が美しかった事を
ふと思い出して笑う



かたたん かたたん








自由詩 金星列車 Copyright 肉食のすずめ 2006-12-20 15:55:55
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