海水浴場
1486 106

季節外れの海辺に残されたものは
一夏の甘い恋物語
青春時代最後の思い出
そんな綺麗なものじゃない

あるカップルは
変わらぬ愛を誓い合いながら
かき氷のカップを砂浜に投げ捨てた

ある子ども連れの親は
走ったら危険だと注意しながら
お弁当の割り箸を砂浜に投げ捨てた

ガラスの破片が散らばる浜辺では
カモメも助走をつけられない

あるカップルは
夕凪の中で口づけを交わした後
ペットボトルを砂浜に投げ捨てた

ある仲良しの学生達は
来年もまた来ようと約束を交わした後
花火の燃えかすを砂浜に投げ捨てた

家庭用排水の流れ込む海では
海月やヒトデも寄って来ない

生命の源母なる海へ
人類は恩を仇で返す
しっぺ返しを受ける前に
何か出来る事はないだろうか

ある白髪のはえた老人は
曲がった腰に鞭を打ちながら
煙草の吸殻を拾い上げた


自由詩 海水浴場 Copyright 1486 106 2006-12-19 17:58:04
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