偏愛組曲第一楽章
虹村 凌

私はあなたを愛して
あなたは私に愛される
私は愛し過ぎないように気をつける
あなた愛され過ぎないように気をつけて
上手くしないと崩れちゃうから

***

鎖で繋がって何処へも行かないで
遠くになんて行かせない
何時までも口づけあっていましょう
息なんてさせてあげない

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私達の明日ってどんなかしら
明日は明日の風が吹くのかしら
県境を越えても私達は犯罪者
ボニーとクライドみたいには行かないわ
私達の心はとっくに蜂の巣なんだもの

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絵の具よりも綺麗に解けて
蛞蝓よりも綺麗に絡んで
大理石よりも綺麗に混ざって
東京タワーみたいにドクドク光るの

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戦争でも内紛でも起こればいいわ
そうしたら全てを放っていける
ずっとあなたと一緒にいられる
手を離す必要もなくなるんだわ

***

早くその手を握らせて
もう一人じゃ立っていられないの

***

美味しい珈琲を飲みに行きましょう
寂しかったらお話しましょう
死にたくなったら何時でもいらっしゃい
この手で殺してあげるから

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お互いをつま先から食べちゃいましょう
いつの間にか無限蛇

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今は何も言わないで


自由詩 偏愛組曲第一楽章 Copyright 虹村 凌 2006-12-14 09:40:36
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